この記事の要点

  • いまのEVのリチウムイオン電池には、古い電池のようなメモリー効果はありません。
  • 充電を途中で止め、必要なときに継ぎ足す使い方はできます。途中停止そのものと、経年・使用に伴う劣化は別です。
  • 毎回0%まで使い切るより、必要な分だけ浅く継ぎ足すほうが電池は長もちしやすくなります。

「充電は最後までやりきらないと電池に悪い」「中途半端に足すと傷む」という不安は、昔の充電池のイメージから来ています。いまのEVが使うリチウムイオン電池では、途中でやめること自体は問題になりません。

むしろ、毎回使い切って満タンに戻すより、生活に合わせて浅く継ぎ足すほうが電池にやさしい使い方です。

リチウムイオン電池にメモリー効果はない

昔のニッケル系充電池には、使い切らずに充電を重ねると見かけの容量が減る「メモリー効果」がありました。この印象が、いまも「継ぎ足し充電は悪い」という誤解につながっています。

EVやスマートフォンで使われるリチウムイオン電池には、基本的にこのメモリー効果はありません。40%で充電をやめても、60%から継ぎ足しても、それだけで使える容量が減ることはありません。

充電を途中で止めるときの手順

EVの充電は、途中で止めることを前提に設計されています。車内のボタン、スマートフォンアプリ、充電器側の操作で停止すると、電気の流れが止まってからコネクタのロックが外れます。

電気が流れたまま無理に抜くような操作にならないよう、車と充電器が制御しています。急な用事で早く出発したいときも、停止操作をしてプラグを戻せば問題ありません。

BMSが電池を守っている

EVには、バッテリー・マネジメント・システム(BMS)という制御装置があります。BMSは電圧、電流、温度を見ながら、過充電や過放電が起きないように電池を管理します。

表示上の100%や0%も、実際には電池を守るための余裕を残していることがあります。日常の充電では、ユーザーが神経質に管理するより、極端な使い方を避ける程度で十分です。

浅く継ぎ足すほど長もちしやすい

電池寿命で大切なのは、1回の充放電でどれだけ深く使うかです。これを放電深度(DoD)と呼びます。毎回100%近く使い切るより、20〜40%ほど減ったところで浅く継ぎ足すほうが、くり返し使える回数は増えやすくなります。

つまり「途中でやめる」「こまめに足す」は、電池に悪いどころか、長もちにつながる方向の使い方です。

放電深度が浅いほど繰り返し充放電できる回数が増えることを示した棒グラフ
図1:放電深度別のくり返し充放電回数の目安。浅く継ぎ足すほど、電池は長もちしやすくなります。

急速充電は次の目的地までの残量を目安にする

急速充電は80%を超えると充電速度が落ちやすくなります。そのため遠出では、100%まで待つより、80%前後で切り上げて次へ進むほうが時間効率は良くなります。

途中でやめても電池に悪くないため、この使い方は時間の面でも電池の面でも合理的です。「せっかくつないだから満タンまで」という感覚より、必要な分だけ入れて出発するほうがEVには合っています。

本当に避けたいのは極端な状態での放置

途中でやめることより注意したいのは、100%や0%に近い状態で長く放置することです。満タンや空に近い状態が長く続くと、電池には負担になります。

また、高温の環境や、急速充電ばかりを毎回くり返す使い方も劣化を早める方向に働きます。継ぎ足し充電を我慢するより、満タン放置、高温、急速充電の多用を避けるほうが大切です。

車と充電器の説明書を優先する

スマートフォンと同じ感覚でケーブルを引き抜くのは避けてください。車・充電器によって停止操作やロック解除の方法が違います。充電器の案内に従って停止し、解除を確認してから取り外します。抜けないときは無理に引っ張らず、充電事業者や販売店へ確認してください。

タイマーや上限設定を使うと楽になる

多くのEVでは、充電上限を80%に設定したり、指定した時刻までに充電を終えたりできます。こうした設定を使えば、満タン放置を避けながら、必要な分だけを自動で入れられます。

夜間の安い電気料金に合わせて充電する場合も、途中で止めることに問題はありません。安い時間に必要な分だけ入れる使い方は、電池にも家計にも向いています。

出典と前提

図表はEVの実車寿命を測定したものではありません。Battery University(2021)などのリチウムイオン電池に関する資料をもとに、放電深度と寿命の一般的な傾向を整理したものです。実際の寿命は、電池の種類、温度、充電速度、車種ごとの制御で変わります。個別車種の推奨設定は、取扱説明書やメーカー案内を確認してください。

資料の対象地域・車種・時点に注意してご確認ください。

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