この記事の要点

  • EVは大きな電池を積んだ「動く蓄電池」として、停電時の電源に使えます。
  • 40kWh級なら節電時に約6〜7日、60kWh級なら約10日分の家庭電力をまかなえる目安です。
  • 実際に使うには、車種の給電対応とV2H・V2L・車内コンセントなどの準備が必要です。

EVは移動手段であると同時に、大容量の電池を積んだ「動く蓄電池」でもあります。地震や台風で停電したとき、専用機器を介してEVの電気を家や家電に使える車種があります。

ただし、すべてのEVで同じように給電できるわけではありません。使えるかどうかは車種、充電口、V2H・V2L対応、車内コンセントの有無、設置済み設備によって変わります。防災目的で考えるなら、購入前や導入前に対応条件を確認しておくことが大切です。

EVから電気を取り出す方法

代表的な方法は3つあります。家全体へ給電したい場合は、EVと分電盤をつなぐV2Hを使います。冷蔵庫、照明、エアコンなどを家の配線で使いやすいのが強みです。

必要な家電だけを動かすなら、外部給電器を使うV2Lや、車両に備わったAC100Vコンセントを使う方法があります。V2Lは持ち運びやすく、屋外や避難先でも使いやすい一方、接続できる機器や出力には上限があります。

何日分くらい使えるのか

停電時に節電しながら、冷蔵庫、照明、スマートフォン充電、最低限の冷暖房などに使うと仮定すると、1日の消費電力を約6kWhに抑える試算ができます。この前提では、20kWh級で約3日、40kWh級で約6〜7日、60kWh級で約10日分です。

平常時と同じように電気を使うと日数は短くなります。災害時は、何を優先して使うかを決め、車で避難や移動に使う分の電池も残しておく必要があります。

EVの電池容量20kWh級、40kWh級、60kWh級ごとに停電時の給電日数の目安を示した棒グラフ
図1:災害時に節電して1日約6kWhを使うと仮定した単純試算。実際の日数は使う家電、気温、残量で変わります。

実際の停電で役立った例

2019年の令和元年台風15号では、千葉県で大規模停電が発生しました。日産の紹介事例では、日産リーフとV2Hを使い、約2日半の停電中に冷蔵庫、照明、エアコン、スマートフォン充電などをまかなった家庭があります。

停電時に困るのは、食料の保冷、照明、情報収集、暑さ寒さへの対応です。EVから電気を取り出せれば、避難所へ行く前に在宅でしのげる可能性が高まります。

V2Hには費用と工事がかかる

家全体に給電できるV2Hは便利ですが、専用機器と設置工事が必要です。東京電力エナジーパートナーの解説では、V2H機器本体はグレードによりおおむね100万〜140万円程度、工事費は30万〜40万円程度になるケースが多いとされています。

導入費用は高めですが、国や自治体の補助金が使える場合があります。普段は夜間など安い電気をEVにためて昼間に家で使う、太陽光発電の余剰電力をEVにためる、といった日常利用も含めて検討すると判断しやすくなります。

車種によって使える方法が違う

リーフ、サクラ、アリアなどの一部EVはV2HやV2Lに対応しています。PHEVでは、車内にAC100Vコンセントを備え、家電を直接つなぎやすい車種もあります。一方、給電に対応していない車種や、使える方法が限られる車種もあります。

購入前に確認したいのは、V2H対応、V2L対応、車内コンセントの有無、最大出力、停電時の操作方法です。すでにEVを持っている場合は、取扱説明書とメーカーサイトで外部給電の条件を確認しておくと安心です。

使うときの注意点

給電中は、車両が動かないようにシフトをPに入れ、パーキングブレーキをかけます。雨や水がかかる場所で、屋外使用を想定していない家電や延長コードを使わないことも重要です。

また、消費電力の大きい家電を同時に使うと、出力上限を超えることがあります。冷蔵庫、照明、スマートフォン充電、通信機器、必要最低限の冷暖房など、優先順位を決めて使うのが現実的です。

太陽光と組み合わせるとさらに強い

屋根の太陽光発電とV2Hを組み合わせると、停電時の備えはさらに強くなります。昼に太陽光で発電し、EVにため、夜に家で使うという流れが作れるためです。

もちろん天候に左右されますが、電力会社からの供給が止まっている間でも、家庭内で「つくる、ためる、使う」を回せる可能性があります。普段の電気代対策と防災を同時に考えられるのが、EVと太陽光の相性のよさです。

出典と前提

給電日数は、災害時に節電した家庭の消費を1日約6kWhと仮定した単純試算です。平常時の電力使用や、エアコン・IH・電子レンジなどの同時利用が多い場合は短くなります。給電の可否、出力、操作方法、屋外使用の可否は車種と機器により異なるため、実際の利用では取扱説明書とメーカー案内を優先してください。

資料の対象地域・車種・時点に注意してご確認ください。

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