この記事の要点
- 火力発電の電気で充電しても、EVの走行CO2はガソリン車より少なくなります。
- 理由は、発電時の排出を含めても、モーターの効率がエンジンより高いからです。
- ただし燃費の良いハイブリッド車との差は小さく、EVの強みは電力がクリーンになるほど大きくなります。
EVは走行中に排気ガスを出しません。ただし、充電する電気を火力発電でつくっているなら、発電所でCO2が出ます。だからEVに意味がないのでは、という疑問はもっともです。
この疑問は、発電から車輪までを含めるWell-to-Wheelの考え方で見る必要があります。結論としては、火力込みでもEVはガソリン車より少なくなります。
カギはモーターの効率
EVが火力込みでも有利になる理由は、モーターの効率です。ガソリン車は、燃料を燃やして得た熱の多くを排熱として捨て、車を動かす力に変えられるのは一部です。
EVは、電気をモーターで効率よく動力に変えます。発電、送電、充電を含めても、燃料を車の中で燃やすより無駄が少ないため、走行1kmあたりのCO2が下がります。
日本の電源平均でもガソリン車より少ない
図の試算では、ガソリン車が1kmあたり約150g、ハイブリッド車が約90g、日本の電源平均で充電したEVが約70gです。火力発電を含む日本の電気でも、EVはガソリン車のおよそ半分に収まります。
これは、発電時のCO2を無視した数字ではありません。充電する電気をつくる段階まで含めた比較です。「発電所で出しているから同じ」という見方は、効率差を見落としています。
ハイブリッド車とは差が小さい
一方で、燃費の良いハイブリッド車と比べると、差は小さくなります。前提によっては、石炭火力の比率が高い地域で、EVとハイブリッド車が拮抗することもあります。
つまり、「日本ならどの条件でもEVがすべての車より少ない」とは言い切れません。正確には、EVはガソリン車より明確に少ないが、優秀なハイブリッド車とは電源構成しだいで近づく、という整理です。
電力がきれいになるほどEVは伸びる
EVの特徴は、電源が変われば同じ車でもCO2が下がることです。ガソリン車は燃料を燃やすかぎり排出を大きく下げにくいですが、EVは電力が再生可能エネルギーに近づくほど走行時の排出が小さくなります。
再エネ中心で充電すれば、走行1kmあたりのCO2は大きく下がります。EVは、いまの電源だけで評価するのではなく、これから電力がどう変わるかも含めて見る必要があります。
EVは再エネの受け皿にもなる
太陽光や風力は、時間帯や天気で発電量が変わります。電気が余る時間にEVへ充電できれば、再生可能エネルギーを捨てずに使いやすくなります。
自宅に太陽光がある場合は、昼に発電した電気でEVを充電できます。EVは単に電気を使うだけでなく、再生可能エネルギーを活かす蓄電池としても役立ちます。
一生分で見ても結論は変わらない
走行段階だけでなく、製造まで含めたライフサイクルで見ても、EVは長く乗ればガソリン車よりCO2が少なくなります。電池製造の負担はありますが、走行時の削減が積み上がるためです。
日本の火力発電比率を考慮した研究でも、電力の低炭素化が進むほどEVの優位性が増すとされています。製造まで含めた詳しい比較は、Q26で整理しています。
自分でCO2をさらに減らせる
EVは、どんな電気で充電するかを選べる乗り物です。再生可能エネルギー由来の電力プランを選ぶ、自宅太陽光で昼間に充電する、電気が余りやすい時間に充電する、といった工夫でCO2をさらに下げられます。
ガソリン車では燃料の中身を自分で変えることはできません。EVでは、エネルギーの選び方が環境性能に直結します。
出典と前提
図表は試算例です。前提はガソリン車の燃費15km/L、ハイブリッド25km/L、EVの電費6.5km/kWh、日本の電源平均の排出係数0.44kg-CO2/kWhです。実際は電費、燃費、地域の排出係数、走り方で変わります。
火力発電比率に応じた評価は電力中央研究所、Well-to-Wheelの考え方は自動車技術会の資料、ライフサイクルの補足はEVsmartの解説を参考にしています。
一次資料・公式の確認先
資料の対象地域・車種・時点に注意してご確認ください。
- ICCT:2025年 欧州乗用車のライフサイクル排出分析欧州の電源構成などを前提とした研究。日本の削減率にそのまま置き換えることはできません。
- IEA:Grid Integration of Electric Vehicles充電時間の調整、電力系統への統合に関する分析。
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