この記事の要点

  • EVは電池をつくるぶん、製造段階ではガソリン車よりCO2排出が多くなります。
  • ただし走行時の排出が大幅に少ないため、生涯ではガソリン車よりCO2を減らせます。
  • 電力がクリーンになるほどEVの削減効果はさらに大きくなり、電池リサイクルも製造分の負担を下げます。

EVは走行中に排気ガスを出しません。ただ、「電池をつくるときにCO2を多く出すので、トータルでは変わらないのでは」という疑問はよくあります。

この疑問に答えるには、走行中だけでなく、製造から廃車までを含めたライフサイクル全体で見る必要があります。結論としては、ライフサイクルで見てもEVはCO2削減につながります。

製造ではEVのほうが多い

まず、製造段階だけを見ると、EVのCO2排出はガソリン車より多くなります。主な理由は、リチウムイオン電池の製造に多くのエネルギーが必要だからです。

電池の材料を採掘し、加工し、セルやパックとして組み立てる工程にはCO2排出があります。この点だけを切り取ると、EVは不利に見えます。ただし、車の一生は製造で終わりではありません。

ガソリン車を100とした生涯CO2排出で、EVは製造が多いが走行が少ないため合計50になる目安を示した積み上げグラフ
図1:生涯のCO2排出の内訳の目安。ガソリン車を100とした指数で、EVは製造では多いものの、走行段階の排出が大幅に少なくなります。

走行段階で大きく逆転する

ガソリン車は、走るたびに燃料を燃やしてCO2を出します。生涯排出の大部分は走行段階から出ます。一方、EVは走行中に排気ガスを出さず、電気の製造にともなう排出だけが主な走行時排出になります。

世界平均の電源構成で見ても、EVは生涯排出がガソリン車のおよそ半分になる目安です。製造時のハンデはありますが、走行段階でそれを取り返して大きく上回ります。

製造分は1〜2年ほどで取り返す

製造時にEVが多く出したCO2は、走行時の排出が少ないことで取り返されます。ICCTの分析では、その損益分岐点はおよそ1.7万km、年数では1〜2年ほどとされています。

日本の平均的な走行距離を年1万km前後と考えると、数年以内に製造時の差を埋め、その後は乗るほどガソリン車との差が広がっていきます。

電力がクリーンなほど差は広がる

EVの走行時CO2は、充電する電気がどうつくられているかで変わります。石炭火力が多い電力では排出が増え、再生可能エネルギーが多い電力では大きく下がります。

ICCTの分析では、欧州のように電力の脱炭素化が進む地域では、EVの生涯排出はガソリン車より大幅に低くなります。電力がきれいになるほど、すでに走っているEVも一緒にクリーンになっていく点が重要です。

火力が多い電力でも無意味ではない

「火力発電が多い国ではEVの意味がない」という見方もあります。しかし、ライフサイクル分析では、石炭火力の割合が高い電力網でも、EVはガソリン車より生涯排出が低い結果が示されています。

理由は、モーターの効率がエンジンより高いからです。発電、送電、充電を含めても、車内で燃料を燃やすより効率よく走れるため、CO2削減効果が残ります。

リサイクルで製造分の負担は下がる

EVの電池は、使い終わったあとに再利用やリサイクルの対象になります。ニッケル、コバルト、リチウムなどを回収して新しい電池に使えれば、鉱山から新しく採掘する量を減らせます。

この循環が広がるほど、電池製造にともなうCO2も下がります。つまり、図で見た「製造では多い」というEVの弱点は、電力の脱炭素化と電池リサイクルでさらに小さくできます。

数字は前提つきで読む

LCAの結果は、電源構成、電池の製造地、車の寿命、年間走行距離、車体サイズで変わります。そのため、「何%少ない」という数字は絶対値ではなく、前提つきの目安として読む必要があります。

ただし、多くの分析で共通する大きな結論は変わりません。EVは製造では多いが、走行で取り返し、生涯ではガソリン車よりCO2が少ない、ということです。

出典と前提

図表はICCTの分析にもとづく代表的な目安を、ガソリン車=100として指数化したものです。実際の数値は、電源構成、電池の製造地、車の寿命、走行距離などの前提で変わります。

生涯排出、地域別の削減率、損益分岐点はICCTの公表資料を参考にしています。電池製造の排出はICCTの2018年レビューおよび関連する電池製造LCAの知見を参考にしています。

資料の対象地域・車種・時点に注意してご確認ください。

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