この記事の要点
- 使い終わったEVバッテリーは、すぐ捨てるのではなく、まず据え置き蓄電池などにリユースされます。
- リユース後に寿命を迎えた電池は、リチウム、ニッケル、コバルトなどを取り出して新しい電池材料に戻します。
- 利用者は販売店やメーカーなど正規のルートで車を手放せばよく、自分で処分先を探す必要はありません。
EVが増えると、使い終わったバッテリーが大量のごみになるのでは、と不安に感じる人もいます。たしかに電池は多くの資源を使ってつくられるため、そのまま捨てるなら大きな問題です。
ただし実際には、EVの電池は「捨てる」より「活かす」方向で扱われます。車での役目を終えたあとも蓄電池として再利用し、最後は金属を取り出して新しい電池の材料に戻していきます。
まずリユースする
EVのバッテリーは、車を引退するときにも容量の7〜8割ほどが残っていることがあります。車を走らせるには物足りなくなっても、動かない用途ならまだ十分に使えます。
代表的なのは、家庭、店舗、工場、公共施設などに置く据え置き型の蓄電池です。太陽光でつくった電気をためたり、停電時のバックアップ電源にしたりする用途では、多少容量が減った電池でも役立ちます。
日本にも専門の取り組みがある
国内でも、使い終わったEVバッテリーを検査し、状態に応じて再利用する取り組みが進んでいます。たとえば日産と住友商事が設立した4R Energyは、リユース、リセール、リファブリケート、リサイクルの4つを掲げて使用済み電池を扱っています。
こうした仕組みでは、回収した電池を一つひとつ調べ、まだ使えるものは蓄電池などに作り直します。自動車メーカーや関連会社が、車を売ったあとも電池の次の使い道まで見ていく流れが広がっています。
最後はリサイクルする
リユースで使った電池も、いつかは本当に寿命を迎えます。その段階で行われるのがリサイクルです。電池を分解・処理し、リチウム、コバルト、ニッケルなどの金属を取り出します。
取り出した金属は、新しい電池の材料として使えます。つまり古い電池を資源として回収し、次の電池に戻す循環です。資源を輸入に頼る日本にとっても、使い終わった電池は国内にある資源のかたまりと見ることができます。
どれくらい回収できるのか
回収技術は進んでおり、リチウム、コバルト、ニッケルなどを高い割合で取り出せるようになっています。海外では、制度として回収率の目標を定める動きも進んでいます。
EUの電池規則では、使用済み電池から素材を回収する目標として、ニッケルとコバルトは2027年に90%、2031年に95%、リチウムは2027年に50%、2031年に80%が示されています。回収して終わりではなく、回収した材料を新しい電池に使う方向へ制度が動いています。
日本では受け皿づくりが進んでいる
日本でも、自動車メーカー、電池メーカー、リサイクル事業者が連携し、使用済み電池を回収して再利用・再資源化する体制づくりが進んでいます。
EVが本格的に増え、初期の電池が大量に引退するのはこれからです。だからこそ、今は回収、運搬、検査、再利用、再資源化の流れを先に整える時期にあります。
利用者がすることはシンプル
EVに乗る人が、バッテリーだけを自分で処分する必要はありません。車を手放すときは、購入した販売店、メーカー、正規の買取や廃車のルートに相談すれば、電池も車の一部として扱われます。
中古車として売れば、電池はそのまま次のオーナーのもとで使われます。廃車にする場合も、正規ルートに出せば、リユースやリサイクルの流れに乗せられます。
課題も残っている
前向きな仕組みが進む一方で、課題もあります。使用済み電池は重く、運搬や保管に手間がかかります。安全に扱うための設備や人材も必要です。
また、技術的に高い回収率を達成できることと、社会全体で安定して回収し続けることは別です。回収ルートや処理能力を広げることが、これからの大きなテーマになります。
出典と前提
図表はEU Battery Regulation(Regulation (EU) 2023/1542)の素材別回収率目標をもとに作成しています。EUの目標であり、日本の法定目標ではありません。日本では、メーカーや関連事業者によるリユース・リサイクルの取り組みと、回収・再資源化の体制整備が進んでいる段階です。
一次資料・公式の確認先
資料の対象地域・車種・時点に注意してご確認ください。
- EU:電池規則 Regulation (EU) 2023/1542附属書XIIの素材別回収目標。EUの規則であり日本の法定目標ではありません。
- IEA:Global Critical Minerals Outlook 2026重要鉱物の供給集中、電池材料需要、供給網の課題。
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