この記事の要点

  • 雪国や寒冷地でもEVは使えます。日本より寒いノルウェーでは、2024年の新車販売の約89%がBEVでした。
  • 冬は航続距離が短くなりますが、早めの充電、出発前の空調、ヒートポンプ車の選択で補えます。
  • 雪道での細かなモーター制御、寒い朝の始動性、排気ガスを出さないことはEVの強みです。

「EVは寒さに弱いから、雪国では無理」と言われることがあります。たしかに冬は暖房や低温の影響で航続距離が短くなり、その点は弱点です。

ただし、寒冷地だからEVが使えないわけではありません。日本より寒いノルウェーでは、EVはすでに新車販売の主役です。弱点を理解して充電や装備を整えれば、雪国でも日常の移動に十分使えます。

日本より寒い国で、新車のほぼ9割がEV

北欧のノルウェーは冬の寒さが厳しく、雪も多い国です。その国で、2024年の新車販売に占めるBEVの割合は約89%でした。日本の約1.8%とは大きな差があります。

この数字は、寒冷地でEVが現実に使われていることを示しています。もちろんノルウェーでは税制や充電インフラの後押しもありますが、「寒いからEVは実用にならない」という見方は、この実例とは合いません。

日本より寒いノルウェーでは新車販売の約89%がEVで、日本は約1.8%であることを示したグラフ
図1:新車販売に占めるBEVの割合。日本より寒いノルウェーでEVが広く選ばれていることを示す目安です。

雪道の走りはむしろ得意

EVは、雪道や凍結路で扱いやすい面があります。モーターはアクセル操作に対して細かく、なめらかに力を出せるため、滑りやすい路面で急にタイヤを空転させにくいからです。

また、重いバッテリーを床下に積む車が多く、重心が低くなりやすいことも安定感につながります。四輪駆動のEVなら、前後のモーターを使った制御でさらに安心感が増します。ただし冬タイヤは必須で、この点はガソリン車と同じです。

立ち往生では排気ガスを出さない強みがある

大雪で立ち往生したとき、ガソリン車やディーゼル車はマフラーが雪でふさがれると、一酸化炭素中毒の危険があります。EVは走行用電池で暖房を動かすため、排気ガスを出しません。

もちろん、EVでも残量が少なければ暖房を長く使えません。冬の遠出では満充電に近い状態で出発し、防寒具、毛布、電気毛布、飲料水、携帯トイレなどを積んでおくことが大切です。

暖房は使い方で大きく変わる

JAFの冬季テストでは、同じEVでも暖房の使い方によって電力の残り方に大きな差が出ています。エアコンを25℃で連続使用すると消費は大きく、電気毛布やシートヒーターを使うと電力を抑えやすい結果でした。

車内全体を強く暖め続けるより、体を直接暖める装備を組み合わせるほうが効率的です。雪国でEVに乗るなら、充電残量だけでなく、暖房の使い方も「冬の航続距離対策」の一部として考えると安心です。

寒い朝でも始動しやすい

ガソリン車は、厳しい冷え込みで補機バッテリーが弱ったり、エンジンオイルが固くなったりすると、朝に始動しにくいことがあります。EVにはエンジンを始動する工程がありません。

また、自宅や職場で充電しながら出発前に車内を暖めておけば、走行用電池の消費を抑えつつ快適に出発できます。寒い朝の暖機待ちが少ないことは、寒冷地の日常では大きな利点です。

注意点は冬の航続距離と充電速度

寒冷地でのいちばんの注意点は、やはり航続距離です。氷点下で暖房を多く使うと、春や秋より走れる距離が短くなります。冬は「表示より短くなる」前提で計画する必要があります。

寒いと急速充電の速度が落ちる場合もあります。長距離移動では早めに充電し、充電時間も少し多めに見ておくと安全です。ヒートポンプ式暖房、バッテリーを温める機能、電池容量の余裕は、寒冷地での使いやすさを大きく左右します。

雪国で選ぶなら見るべき装備

雪国でEVを選ぶなら、カタログ上の航続距離だけでなく、冬の装備を確認してください。ヒートポンプ式暖房、バッテリーヒーター、充電前に電池を温める機能、四輪駆動の有無は重要です。

自宅や職場で基礎充電できるかも大きなポイントです。冬は朝に残量を多くして出発できるほど安心です。集合住宅の場合は、マンションや近隣で普通充電を確保できるかもあわせて見てください。

出典と前提

図表は2024年の新車販売に占めるBEV比率の目安です。ノルウェーはオルタナが報じたOFV発表値、日本は国内EV販売データの集計を参考にしています。冬の航続低下や暖房のもち方は、気温、車種、残量、暖房設定、防寒具の有無で大きく変わります。

立ち往生時の備えは、JAFの冬季EVユーザーテストや大雪時の安全情報を参考にしています。大雪が予想される日は外出を控え、やむを得ず移動する場合は道路情報を確認し、満充電に近い状態で出発してください。

資料の対象地域・車種・時点に注意してご確認ください。

掲載:EV START · 編集方針 · この記事の内容について連絡する