この記事の要点

  • 冬は穏やかな寒さで1〜2割、氷点下で暖房を多用すると3〜4割ほど航続が短くなります。
  • 真夏の冷房による低下は冬より小さく、標準時から1割程度が目安です。
  • ヒートポンプ暖房と出発前のプレコンディショニングで、冬の目減りはかなり抑えられます。

EVは冬に航続距離が短くなる、とよく言われます。これは事実です。ガソリン車はエンジンの排熱で車内を暖めますが、EVは暖房に電気を使うため、走行に回せる電気が減ります。

ただし、落ち込み方は気温、暖房方式、走り方、出発前の準備で大きく変わります。Q6で見た「実走行はカタログの7〜8割」という前提に、季節の影響を重ねて考えると計画しやすくなります。

冬はどれくらい航続が落ちるか

冬の低下幅は条件で大きく変わります。穏やかな寒さなら1〜2割程度、0〜5℃前後の冬なら2割程度、氷点下で暖房を多用すると3〜4割程度の低下を見込んでおくと現実的です。

たとえば標準時に240km走れる車でも、厳寒期には150〜190km程度まで短くなることがあります。冬の長距離移動では、いつもより早めに充電する計画が必要です。

春秋、真夏、穏やかな冬、厳寒時の実際の航続距離を指数で比較した棒グラフ
図1:季節・条件で変わる実際の航続距離の目安。春・秋を100とした指数で、厳寒・暖房多用では62程度まで下がる想定です。

冬に落ちる理由は暖房と低温

冬の航続低下の主因は暖房です。冷えきった車内を一気に暖めると、大きな電力を使います。さらに、リチウムイオン電池は低温で化学反応が鈍くなり、使える容量が一時的に下がります。

これはバッテリーが壊れているわけではありません。電池や車内が暖まれば回復する一時的な変化です。冬の弱点は「仕組みを知って、電気の使い方を整える」ことでかなり抑えられます。

ヒートポンプ式は冬に強い

暖房方式も重要です。古いタイプの抵抗加熱ヒーターは、電気を熱に変えて暖めるため消費電力が大きくなります。一方、ヒートポンプ式は外気の熱をくみ上げて使うため、同じ暖かさを少ない電力で得やすくなります。

車種を選ぶときは、暖房がヒートポンプ式か、バッテリーを温める機能があるかを確認すると、冬の使い勝手を見通しやすくなります。

抵抗加熱ヒーター車とヒートポンプ搭載車の冬の航続指数を比較した横棒グラフ
図2:暖房方式で変わる冬の航続の目安。標準時を100とした指数で、ヒートポンプ搭載車は落ち込みが小さい想定です。

真夏の冷房は冬ほど落ちない

真夏も航続距離は少し短くなりますが、冬ほど大きくは落ちません。冷房の消費電力は、冷えきった車内を暖める冬の暖房より小さく済むためです。

猛暑、渋滞、電池冷却の負荷が重なると電費は悪化します。それでも一般的には、真夏の冷房による低下は標準時から1割程度を目安に見ておけば十分です。

出発前に暖めると目減りを抑えられる

冬にもっとも効く対策は、充電中に車内やバッテリーを暖めておくプレコンディショニングです。家庭の電源を使って出発前に暖めれば、走行中に電池から使う暖房電力を減らせます。

また、車内全体を強く暖めるより、シートヒーターやハンドルヒーターを使うほうが効率的です。体に近い部分を直接暖めれば、暖房設定を控えめにしても快適に走れます。

寒冷地では充電計画も早めにする

低温は航続距離だけでなく、急速充電の速さにも影響します。電池が冷えていると本来の充電速度が出にくく、思ったより時間がかかることがあります。

雪国や寒冷地では、残量が少なくなってから探すのではなく、早めに充電する運用が安心です。自宅充電があれば、毎朝しっかり充電し、出発前に暖めた状態で走り出せます。

冬は電気代も少し上がる

同じ距離を走るのに多くの電気を使うため、冬は走行コストも少し上がります。たとえば標準期の電費が6.5km/kWhで、冬に5km/kWhへ悪化すれば、同じ距離の電気代は約3割増えます。

それでも、EVの走行コストはガソリン車より低く収まりやすいのが一般的です。冬は「航続が縮み、電気代が少し増える季節」と見込んでおくと、家計の計画も立てやすくなります。

車種選びで冬の弱点は小さくできる

寒冷地で使うなら、ヒートポンプ式暖房、バッテリーヒーター、プレコンディショニング機能、余裕のある電池容量を確認します。寒冷地向け装備があるグレードも候補になります。

カタログ航続距離だけで選ぶのではなく、「冬に暖房を使ったときにどれくらい残るか」という視点を持つと、日常利用にも長距離にも合う車を選びやすくなります。

出典と前提

本記事の航続低下率は代表的な目安です。実際の低下幅は、気温、車種、年式、暖房方式、バッテリー温度管理、走行速度、道路条件、空調設定で変わります。図表はMidtronics(2025)、東京電力エナジーパートナー(2025)、EV充電エネチェンジ(2024)、EVsmartブログ(2015)などの情報をもとに作成しています。

資料の対象地域・車種・時点に注意してご確認ください。

掲載:EV START · 編集方針 · この記事の内容について連絡する