この記事の要点

  • EVは低速時に静かなため、歩行者が接近に気づきにくいという課題があります。
  • 日本では対象となる新車に、低速時に音を出す車両接近通報装置(AVAS)が義務づけられています。
  • 20km/hを超えるとタイヤ音や風切り音が聞こえやすくなるため、通報音は主に低速域を補います。

EVの静かさは、乗っている人には大きなメリットです。エンジン音や振動が少なく、住宅街の騒音も減らせます。一方で、車の外にいる歩行者から見ると、低速で近づく車に気づきにくいという課題があります。

この課題は放置されているわけではありません。現在のEVやハイブリッド車には、低速時に自動で音を出して接近を知らせる「車両接近通報装置」が義務づけられています。英語ではAVAS(Acoustic Vehicle Alerting System)と呼ばれます。

EVは車内も静か?試乗で確かめたいこと

EVには走行用エンジンがなく、低速ではエンジン由来の音や振動を抑えられます。ただし、車内の静かさはタイヤ、路面、速度、遮音性能でも変わります。静かなEVを選びたい場合は、普段使う速度と荒れた路面の両方で試乗し、会話のしやすさやタイヤ音を確かめてください。AVASは車外の歩行者へ接近を知らせる装置です。

静かすぎる問題は低速時に起きやすい

歩行者は、車の接近を目だけでなく音でも判断しています。後ろから来る車、駐車場で動き出す車、建物の陰から出てくる車は、見る前に音で気づくことがあります。

EVはモーターだけで発進できるため、発進直後や駐車場内などの低速域では、ガソリン車より接近音が小さくなります。特に視覚に障がいのある人にとって、音は重要な手がかりです。

低速域は通報音がカバーする

車両接近通報装置は、EVやハイブリッド車が低速で走るときに、周囲へ車の接近を知らせる音を出す装置です。日本の基準は国連の協定規則第138号に沿って導入されています。

おおむね20km/h以下の低速域では通報音が車の接近を知らせ、20km/hを超えるとタイヤと路面の音や風切り音が聞こえやすくなります。静かすぎて気づきにくい低速域を、通報音で補う設計です。

0から20km/hは車両接近通報装置が音を出し、20km/h以上はタイヤや風切り音で聞こえることを示した図
図1:車速と歩行者が音で気づける仕組みの関係。実際の聞こえ方は周囲の騒音、車種、音量で変わります。

装着は法律で義務づけられている

国土交通省は、国連の自動車基準調和の枠組みで採択された静音性車両の基準を踏まえ、EVやハイブリッド車などに車両接近通報装置の装着を義務づけています。

日本では、新型車は2018年3月8日から、継続生産車は2020年10月8日から適用されています。現在、新車で販売されるEVは、この低速時の通報音を備えていると考えてよい状況です。

音を消せない方向で整備されている

初期の一部車種では、運転者が通報音を切れるスイッチを備えていた時期がありました。しかし安全対策としては、必要な場面で確実に音が出ることが重要です。

現在の基準では、車両接近通報装置は作動を停止できる機能を持たない方向で整備されています。音の大きさや周波数も、歩行者が車の接近として認識しやすいよう基準が設けられています。

リスクは以前から指摘されていた

米国NHTSAの調査では、AVASが普及する前のハイブリッド車について、低速での一部の運転場面で歩行者や自転車との事故リスクが高い傾向が示されました。静かな電動走行が、音による気づきを弱める可能性があるためです。

このような知見を受けて、各国で通報音の基準が整えられました。つまり、静かすぎる問題は「気のせい」ではなく、確認された課題に対して制度上の対策が入ったものです。

静かさは街にとって利点でもある

EVの静かさは、安全対策が必要な一方で、街の騒音を減らす大きな利点でもあります。住宅街、夜間配送、バスやタクシーなどで電動化が進むと、エンジン音や排気音は減ります。

大切なのは、すべての場面で車をうるさくすることではありません。低速で気づきにくい場面だけ通報音で補い、それ以外では静かな走行の利点を生かす、というバランスです。

運転者と歩行者の注意も必要

通報音があるからといって、運転者が油断してよいわけではありません。駐車場、住宅街、横断歩道の手前、交差点では、速度を落として周囲をよく見ることが基本です。

歩行者側も、音がしないから車が来ていないと決めつけないことが大切です。イヤホンやスマートフォンを使いながら歩くと、EVに限らず車の接近に気づきにくくなります。

出典と前提

図表は、車速と歩行者が音で気づける仕組みの関係を示すイメージです。20km/h以下の低速域で通報音を出す考え方は、国連協定規則第138号と国土交通省の保安基準改正資料を参考にしています。実際の聞こえ方は周囲の騒音、車種、音量、歩行者の状態で変わります。

資料の対象地域・車種・時点に注意してご確認ください。

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