この記事の要点

  • EVは車両価格では高くなりやすく、電気代・税金・整備費で取り返す構造です。
  • 年1万km走行では、エネルギー費用だけでEVが年間約5万円安い試算があります。
  • 補助金、燃料相場、残価、保有年数しだいで、5年TCOは割高にも割安にもなります。

EVはガソリン車より本当に安いのでしょうか。答えは「条件しだい」です。EVは同クラスのガソリン車より車両価格が高くなりやすい一方、走行コスト、税金、メンテナンス費では有利になりやすく、補助金も初期負担を下げます。

そのため、買うときの価格だけでなく、購入から手放すまでにかかる総額で見る必要があります。この考え方が総保有コスト、つまりTCO(Total Cost of Ownership)です。

車両価格だけで比べると判断を誤りやすい

同クラスで比べると、EVはまだガソリン車より本体価格が高い傾向があります。普通乗用車クラスで数十万円、試算条件によっては100万円前後の差を置く例もあります。

ただし、EVは購入後の運用費で差を取り返すタイプの車です。初期価格差を補助金でどこまで縮められるか、そして電気代や整備費の安さを何年分積み上げられるかが、TCOの分かれ目になります。

走行コストはEVが大きく有利

もっとも差が見えやすいのは、日々の燃料にあたる費用です。年1万km走る前提では、EVのエネルギー費用はガソリン車の約半分になる試算があります。

年1万km走行あたりのエネルギー費用をEVとガソリン車で比較した横棒グラフ
図1:年1万km走行あたりのエネルギー費用。EVは電費6km/kWh・31円/kWh、ガソリン車は燃費15km/L・155円/Lの前提。

この前提では、EVが年間約51,646円、ガソリン車が年間約103,230円です。エネルギー費用だけで年間約5万円、EVが安く済む計算になります。

ただし、この差は充電場所と燃料相場で変わります。自宅の夜間電力や太陽光の余剰で充電できる家庭ではEVがさらに有利になり、外出先の急速充電を多用する場合は差が縮みます。

税金とメンテナンスもEVがやや有利

EVは自動車重量税の免税やグリーン化特例など、税制面で優遇される場面があります。制度は時期で変わるため、購入時点の対象車種と登録時期を確認することが前提です。

メンテナンスでも、エンジンオイル交換が不要で、回生ブレーキによってブレーキ部品の摩耗を抑えやすい点は有利です。一方で、車重が重い車種ではタイヤ摩耗が早くなることがあり、保険料や修理費が高めに出る可能性もあります。

5年TCOでは前提しだいで結果が変わる

車両価格、補助金、燃料代、税金、整備費、残価を積み上げると、EVの有利・不利はシナリオで大きく変わります。5年・5万km保有時の試算では、補助が弱く燃料価格が落ち着く条件ではEVが割高になり、補助が手厚く燃料価格が高い条件ではEVが大きく有利になります。

5年5万km保有時の総保有コストをガソリン車、PHEV、EVで比較した棒グラフ
図2:5年・5万km保有時の総保有コスト比較。シナリオ1は支援縮小・燃料安定、シナリオ2は支援維持・燃料高止まり、シナリオ3は支援手厚い・残価改善の前提。

読み取りのポイントは単純です。支援縮小・燃料安定のシナリオではEVがガソリン車より約32万円高く、支援維持・燃料高止まりではEVが約22万円安く、支援手厚い・残価改善では差が約100万円まで広がります。

分かれ目は距離、年数、残価

初期価格差を運用コストで取り返すには、走る距離と乗る年数が必要です。年1万km以上走り、5年以上保有する使い方なら、総額で並ぶか下回る例が多くなります。逆に、走行距離が短く、数年で乗り換える使い方では、運用費の安さを積み上げる前に手放すことになりやすいです。

もう一つの重要な要素が残価です。中古EV市場やバッテリー保証への評価が低いと、下取り価格がTCOを押し上げます。多くのメーカーは8年・16万km前後のバッテリー保証を用意していますが、売却時の市場評価は車種や時期で変わります。

まず自分の3条件を決める

EVが安くなるかを判断するには、年間走行距離、保有予定年数、主な充電場所の3つを先に決めます。自宅充電ができ、通勤や送迎で距離を走り、長く乗る家庭ほどEVは有利になりやすくなります。

軽EVのように車両価格と補助金のバランスが取りやすい車種では、街乗り中心でもTCOが合いやすいことがあります。普通車クラスのEVでは初期価格差が大きくなりやすいため、距離と年数をより慎重に見ます。

出典と前提

本記事の金額は試算例であり、車種、地域、電気料金、ガソリン価格、補助制度、売却時期で変動します。図表は東京電力エナジーパートナー(2024)、EneGaeru(2026)の試算を参考に作成しています。補助金や税制は年度で変わるため、購入時点では次世代自動車振興センター、経済産業省、自治体、販売店の最新情報を確認してください。

資料の対象地域・車種・時点に注意してご確認ください。

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